ここで、観光客の間でしばしば生じる誤解について、歴史的事実をもとに検証しておきましょう。
ネット上の口コミで時折見受けられるのが、「公会堂という割にはホールや大劇場のような大空間が見当たらない」という疑問です。実はこれには明確な歴史的理由があります。もともと明治43年に竣工した施設は、広大な講堂や会議室を擁した「公会堂本館」と、要人を迎えるための別棟「貴賓館」から構成されていました。しかし、終戦後の昭和31年(1956年)に公会堂本館は火災などではなく敷地利用の変更等に伴い解体され、奇跡的に解体を免れた「貴賓館」のみが現在の場所に残されたのです。すなわち、今私たちが目にしている建物は「公会堂全体」ではなく、当時の最高級エリアであった「貴賓館単体」なのです。
さらに、この建物が歩んだ波乱万丈の変遷も特筆に値します。明治の共進会終了後は福岡県公会堂の貴賓館として利用された後、戦後は福岡高等裁判所の臨時庁舎、さらには福岡県立水産高等学校の校舎、福岡中央高等学校の仮校舎、福岡県立図書館など、驚くべき多様な公的用途に転用され続けてきました。重厚な貴賓室がかつて法廷や教室として使われていたという事実は、近代日本の激動期を生き抜いた建築の逞しさを物語っています。
また、実務的な誤解として「カフェだけを利用する場合でも入館料が必要なのか」という点が挙げられます。原則として、カフェ貴賓館は館内展示エリアの一部に位置しているため、入館受付を通る構造になっています。ただし、平日の混雑状況や企画によって運用が異なる場合があるため、訪問時は入館チケット(大人200円)を購入した上で、館内鑑賞と併せて楽しむのが最もスムーズで確実です。