晩年の地井さんに新たな魅力を吹き込んだのが、テレビ朝日系で放送された『ちい散歩』だった。それまでの紀行・情報番組といえば、観光名所や話題のグルメをテンポよく紹介するスタイルが主流だった。しかし地井さんは、どこにでもある路地の匂いや、道端に咲く名もなき草花、町工場で働く職人の手元にカメラを向けさせた。
散歩の終わりに彼がさらさらと描く絵手紙は、街へのラブレターそのものだった。拙いながらも温かみのある水彩画と、短い言葉に込められた人間への愛着。押しつけがましくない人柄は、朝のひとときに安らぎを求める視聴者の心を掴み、散歩ブームという社会現象を生み出したのである。