トータス松本と奥田民生の関係性を語る上で外せないのが、ウルフルズの活動休止期間中に起きた音楽引退危機の真相です。2009年にウルフルズが無期限活動休止に入った後、トータス松本はソロ活動やドラマ出演など多方面で活躍する一方で、ミュージシャンとしての自らの立ち位置について深い葛藤を抱えていました。
音楽プロデューサーや先輩ミュージシャンへ相談を持ちかける中で、シンガーソングライターの井上陽水は「役者一本に絞るのも面白いんじゃないか」と背中を押しました。しかし、唯一それに猛反対し、激しい言葉で引き留めたのが奥田民生でした。当時のインタビューや手記によると、奥田民生は「音楽やめて役者になるとか、わけわからんこと言い出すんですよ」と呆れつつも、真っ向からトータス松本を説得しました。
奥田民生が放った「たしかにお前は歌もギターも俺よりターヘー(下手)だけど、それでもやめることはないだろう」という言葉は、照れ隠しの毒舌の中に「お前には歌い続ける圧倒的な価値がある」という最大級のリスペクトが込められたものでした。トータス松本は後に「民生くんだけなんです、僕のことを真正面から『お前』と呼んでいじり倒してくれるのは」と述懐しており、2014年のウルフルズ再始動を決断する決定打となった夜として語り継がれています。