なぜ、かつおだしを口に含むと、これほどまでに心が落ち着くのか。近年の感覚生理学や脳科学の研究でも、天然出汁に含まれるアミノ酸や香気成分が、副交感神経を優位にし、ストレス状態を緩和させるメカニズムが次々と実証されている。
鰹節特有のスモーキーな香りに含まれるピラジン類やフェノール類は、嗅覚を通じて脳の情動を司る扁桃体に直接働きかける。さらに、舌の味蕾を刺激する濃厚な旨味は、過剰な刺激に慣らされた現代人の味覚受容体をリセットし、深い安心感と満足感をもたらすのだ。
どんぶりを持ち上げ、直接つゆをすする。喉を通る温かさと、身体の芯へと広がっていく滋味。それはまさに、張り詰めた心身に施される天然の処方箋と言っても過言ではない。