「もろきゅう」の語源を遡ると、醤油や味噌を醸造する過程で発酵・熟成した未圧搾の個体「もろみ(諸味)」をきゅうりに添えて食したことに由来します。つまり、居酒屋で提供されるあの味噌の正体は、汁物に溶かす調味料ではなく、そのまま具材として味わうために作られた「なめ味噌」のカテゴリに属するものです。
家庭にある普段の米味噌や合わせ味噌との決定的な違いは、主に「塩分濃度」「粒感の有無」「甘みと発酵期間」の3点に集約されます。
普段の味噌は加熱調理や汁物に溶かすことを前提としているため、塩分濃度が約10%〜12%前後と高めに設計されています。これに対し、もろきゅうに使われる「もろみ味噌」は、大豆や麦の粒がそのまま残っており、塩分濃度はおよそ5%〜7%程度と約半分に抑えられています。さらに、米や麦の麹由来の糖分や水飴・みりんが加えられているため、口当たりがまろやかで、きゅうりのみずみずしさを引き立てる絶妙な塩梅に仕上がっているのです。
また、和歌山県や静岡県などで伝統的に親しまれてきた金山寺味噌(きんざんじみそ)も、もろきゅうの味噌として広く重宝されています。金山寺味噌は大麦、大豆、米麹に、ナスやショウガ、ウリなどの刻み野菜を直接漬け込んで発酵させたもので、濃厚な旨味と野菜の食感が調和した、贅沢な「食べるおつまみ味噌」の筆頭です。