殺せんせーの正体と人間時代|初代死神がタコ姿を選んだ理由

殺せんせーの正体と人間時代|初代死神がタコ姿を選んだ理由

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弟子に裏切られ捕縛された初代死神は、一般の刑務所ではなく、国際秘密研究所へと送還されます。そこで彼を待ち受けていたのが、天才的頭脳を持ちながら自己顕示欲と加虐性の塊であったマッドサイエンティスト、柳沢誇太郎でした。

柳沢は、反物質を用いた超エネルギー研究の被験体として死神を利用。細胞内に反物質生成器官を組み込む人体実験を執拗に繰り返し、死神の肉体を強制的に変貌させていきました。肉体が激痛とともに変化し、人間としての生体を徐々に失っていく地獄の日々のなか、彼の監視役として研究所へ通っていたのが、柳沢の婚約者であった女性教師・雪村あぐりです。

あぐりは、柳沢から日常的にモラルハラスメントを受けながらも、底抜けの明るさと優しさを失わない女性でした。昼は椚ヶ丘中学校の落ちこぼれクラス「3年E組」を懸命に受け持ち、夜は研究所で死神の食事を用意し、日々の出来事を語りかける。死神にとって、彼女が着ていた独特のダサいプリントTシャツや、生徒たちを愛おしそうに語る屈託のない笑顔は、人生で初めて触れる「打算のない純粋な光」そのものでした。

しかし、安寧は長く続きません。月で実験中だったマウスが暴走し月面の7割を吹き飛ばした事故を受け、柳沢は地球上の死神も同様に翌年3月13日に寿命を迎え、暴走して地球ごと消滅することを知ります。用済みとなった死神の処刑計画を知った死神は、覚醒した反物質の破壊力で暴走し、研究所を壊滅状態に追い込みます。

その際、暴れる死神を止めようと駆け寄った雪村あぐりは、柳沢が研究所に敷設していた対触手地雷の破片を胸に浴びて致命傷を負ってしまいます。崩れ落ちるあぐりを抱きかかえる死神に対し、彼女は最期にこう言い残しました。「もしあなたに、その時間が残されているなら……あの子たちを見てあげて。先生って、いいものよ」。

死神は痛感しました。自分には標的を殺すための無数の技術はあっても、「目の前で命を落とそうとしている一人のか弱い女性を抱き止め、救う手」が何ひとつ備わっていなかったことを。絶叫とともに溢れ出た反物質の触手は、彼女の血と体温を吸い上げ、全身を包み込みました。あぐりの遺志を継ぎ、生徒たちを救うための無敵の教師になる――その魂の誓いが、あの黄色く、どんな困難も包み込める柔軟な「タコの姿」へと彼を完全に作り替えた決定的な理由でした。

加藤 愛美
著者

加藤 愛美

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。