体調不良時に「早く治したい」と焦るあまり、ネット上の断片的な情報に頼って危険な選択をしてしまう患者が後を絶ちません。現場の消化器内科医が最も警鐘を鳴らすのが、自己判断による薬の選択です。
胃腸風邪に効く市販薬の注意点として真っ先に挙げられるのは、強力な下痢止め(ロペラミド塩酸塩などを含む止瀉薬)を安易に飲んではならないという鉄則です。下痢は苦痛を伴いますが、体内に侵入した病原体や毒素を排出するための防御機構そのものです。下痢止めによって腸の蠕動運動を強制的に止めてしまうと、毒素やウイルスが腸管内に長期間滞留し、粘膜から吸収されてかえって全身状態を悪化させたり、腸閉塞や重篤な腸炎へと進行する危険性があります。
同様に、発熱や頭痛に対してロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を空腹時に服用すると、炎症を起こしている胃腸粘膜をさらに攻撃し、胃潰瘍や出血性胃炎を誘発するリスクが高まります。解熱鎮痛剤を用いる場合は、胃粘膜への刺激が比較的少ないアセトアミノフェンを選択するのが臨床的な標準対応です。整腸剤(ビオフェルミンやミヤBMなど)や漢方薬(五苓散など)は腸内環境を整えたり水分代謝を助ける目的で安全に使用できますが、劇的な即効性を過信するのは禁物です。
では、医療機関へは何科を受診すべきか、そしてどのタイミングで向かうべきでしょうか。大人の場合は一般内科または消化器内科、中学生以下の子どもであれば小児科の受診が原則です。ただし、特効薬が存在しないウイルス性胃腸炎において、発症直後の無理な受診は待合室での二次感染拡大や患者本人の著しい体力消耗を招く側面もあります。
自宅安静を優先すべきか、即座に受診すべきかの明確な判断基準は以下の通りです。
水分が全く保持できず半日以上尿が出ていない場合、唇や皮膚が乾燥し意識が朦朧としている場合、激しい腹痛が一箇所に集中している場合、便に明らかな血液が混じっている(血便)場合は、脱水症や細菌性腸炎、虫垂炎や腸重積などの別疾患の疑いがあるため、時間を問わず救急外来を含めた即座の受診が必要です。