シニア層の健康増進や親睦を目的に掲げて始まったはずの競技で、なぜ陰湿な老人いじめが横行してしまったのか。取材や体験者の証言を総合すると、その元凶は個人の性格だけでなく、ゲートボール特有の過酷なルール設計と連帯責任のプレッシャーにあります。
ゲートボールは、5人1組の2チームが先攻(赤)・後攻(白)に分かれ、3つのゲートを通過させゴールポールに当てる競技です。しかしその実態は、単にボールを打つ運動ではなく、「相手ボールをコート外に弾き出す」「味方ボールを進める」といった高度な戦術が求められる頭脳戦です。ここで最大の問題となるのが、自分のボールを他球に当てる「タッチ」と、その後に相手や味方の球を足で踏んで打撃する「スパーク打撃」の存在です。
1人のプレーヤーが狙い通りの位置にボールを運べなかったり、タッチに失敗したりすると、それまでチームが積み上げてきた緻密な戦略が一瞬で崩壊します。1つのミスがチーム全体の失点や敗北に直結するため、周囲からの視線は極めて険悪になります。失敗した仲間に対して「何をやっているんだ!」「練習してきたのか!」といった容赦のない怒号や罵声が浴びせられ、精神的に追い詰められたメンバーが「やめたい」と口を揃える事態が全国で頻発しました。
さらに陰湿なのが、試合後の関係性です。指示通りのコースに打てなかった初心者を露骨に無視したり、翌週の練習から連絡網を回さずに締め出したりする「村八分」が発生します。仲間同士の支え合いが求められる高齢期において、コミュニティからの排除は致命的な心理的孤立をもたらすため、初心者が敬遠するのは必然の帰結でした。