インターネット上では「時効が成立した後に自首したり、犯行を公表して本を出せば大儲けできるのではないか」といった誤解が見受けられます。しかし、法実務と社会通念の両面において、そのような甘い道は存在しません。
時効成立後の自首で罪に問われるのか?
公訴時効が完成している場合、警察署に名乗り出ても刑事事件として立件されることはなく、刑事訴訟法第337条に基づき「免訴」となります。自首そのものによって刑務所へ収監されることはありません。しかし、遺体の隠匿場所などを告白した場合、死体遺棄罪の時効が残っていれば別罪で逮捕される可能性はあります(殺人罪より死体遺棄罪の方が時効が短いため、通常は同時に成立しますが、状況により例外が生じます)。
時効成立後も消えない「民事賠償責任」
刑事上の時効と、民事上の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は別個の制度です。1978年の足立区女性教諭殺害事件では、時効成立後の2004年に犯人が名乗り出た際、東京地裁は「犯人が犯行を隠蔽し続けたことは権利濫用にあたり、時効の援用は認められない」と判断し、遺族に対して約4,200万円の損害賠償支払いを命じました。
つまり、刑事罰からは逃れられても、法的な賠償義務を背負わされ、給与や財産の差し押さえを受けるリスクは一生涯残ります。
海外逃亡による「時効停止」の仕組み
「海外へ高飛びすれば時効が進む」という言説も明確な誤りです。刑事訴訟法第255条第1項には、「犯人が国外にいる期間は、公訴時効の進行が停止する」と明記されています。海外に10年間滞在していれば、その10年間は時効カウントが完全にストップするため、日本に帰国した瞬間に逮捕される法体制が整っています。