猛暑の屋外や長時間の負荷駆動によってスマートフォンが高熱化した際、「人間用冷却シートを背面に貼れば熱が下がるのではないか」という発想がSNS上で度々散見されます。しかし、大手修理専門店の現場エンジニアや端末技術者が口を揃えて鳴らす警鐘は極めて深刻です。結論から述べれば、熱さまシートや冷えピタなどのジェルシートをスマートフォンへ貼る行為は、基板を水没させて破壊する自爆行為に極めて近いリスクを伴います。
その元凶が「内部結露」です。真夏に氷水を注いだグラスの外側に大量の水滴が付着する現象と同じ原理が、密閉されたスマートフォン内部で発生します。発熱中のプロセッサーは局所的に50℃〜60℃近くまで達しており、その背面にジェルシートの水分蒸発熱(気化熱)による急激な冷却が加わると、外装と内部空間の間に激しい温度勾配が生じます。この急変によって、端末内部の空気に含まれる飽和水蒸気量が限界を超え、微小な水滴となって電子基板や超小型チップの上に直接結露を起こすのです。
「防水仕様のスマートフォンだから問題ない」という認識も完全な誤解です。端末のIPX8といった防水等級は「外部からの液体の侵入」を防ぐ構造に過ぎず、組み立て時に内部へ閉じ込められた空気自体の水分凝結まで防ぐ手立てはありません。街の修理業者に持ち込まれる「突然電源が入らなくなった」という端末を分解した際、内部の液体侵入インジケーター(水没シール)が鮮やかな赤色に変化し、回路が錆びてショート痕を残している事例の多くに、こうした冷却ジェルシートや氷嚢の誤用が関係しているのが実状です。