血液検査にまつわるネット言説の中には、医学的根拠を欠いた危険な誤解が数多く流布しています。ここでは代表的な3つの神話を検証し、是正します。
誤解1:「全項目が基準値内なら、重病のリスクは完全にゼロである」
最も危険な思い込みがこれです。標準的な定期健康診断で行われる血液検査は、肝臓、腎臓、脂質、血糖、血液細胞など限られた臓器の機能スクリーニングに過ぎません。例えば、早期の胃がん、大腸がん、膵臓がんなどは、相当に進行するまで血液検査の一般項目に一切の異常値を示さないことが医学的に証明されています。基準値内だからと過信し、内視鏡検査や画像診断を怠ることは避けなければなりません。
誤解2:「前日にお酒を断てば、肝機能の数値はごまかせる」
健診前日だけ禁酒をして数値を良く見せようとする受診者が散見されますが、これは医学的にほぼ無意味です。アルコール性肝障害の指標であるγ-GTPの半減期は約2週間から26日と言われています。前日1日だけアルコールを抜いたところで、細胞レベルで生じた酵素分泌の亢進はリセットされません。むしろ一時的な脱水を招き、血中濃度が凝縮されてヘマトクリットや尿酸値が見かけ上悪化する弊害を招きます。
誤解3:「LDL(悪玉)コレステロールは低ければ低いほど良い」
動脈硬化予防の観点からLDLコレステロールの低減が推奨されますが、60 mg/dLを下回るような極端な低値も警戒が必要です。コレステロールは細胞膜や各種ステロイドホルモン、胆汁酸を生成する重要な原料です。極端な低コレステロール血症の背景には、重度の栄養失調、甲状腺機能亢進症、あるいは肝臓の合成能力そのものが低下している肝硬変などの病態が隠れているリスクが存在します。