「通院が面倒」「診断書を取るのが恥ずかしい」「安く済ませたい」という動機から、海外通販サイトを利用した女性ホルモンの個人輸入に手を出す危険性が後を絶ちません。しかし、この選択は自らの命をルーレットにかけるような極めて無謀な行為です。
ネット通販で流通している経口エストロゲン製剤(プレマリンやダイアン、プロギノバ等)や注射液には、粗悪品や有効成分の含有量が偽装された模倣品が混入しているリスクが常に付きまといます。さらに経口剤の場合、消化管から吸収されて最初に肝臓を通過する「肝初回通過効果」を受けるため、注射製剤と比べて血栓症の引き金となる凝固因子の産生を著しく刺激し、肝臓へ過度な負担を強いることになります。
法的なセーフティネットの観点からも決定的な盲点が存在します。日本国内で正規の医師から処方された医薬品で重篤な副作用が生じた場合、医療費や障害年金が給付される公的な「医薬品副作用被害救済制度」が適用されます。しかし、個人輸入代行で購入した医薬品によって血栓症で倒れ、重度の後遺障害が残ったり死亡したりしても、救済制度の対象外となり一切の補償を受けられません。すべて自己責任として莫大な治療費と障害を生涯背負うことになります。