モラハラ被害者が一様に絶望するのが、「感情的にならず冷静に話し合おうとしても、一切会話が成立しない」という壁です。モラ夫と話し合いができない原因を精神病理学的に紐解くと、しばしば自己愛性パーソナリティ障害の行動様式と重なり合います。
彼らの精神構造は、脆く壊れやすい自己評価を「全能の自分」という肥大化したプライドで覆い隠すことで成り立っています。そのため、配偶者からの苦言や要望を「建設的な対話」として受け取ることができず、「自分に対する攻撃」「屈辱的な全否定」と知覚してしまいます。傷つきやすい自我を守る防衛機制として、即座に猛烈な怒りや他責化(論点のすり替え)を発動させるのです。
「あなたが怒鳴るから怖い」と伝えれば、「俺を怒鳴らせるような行動をとったお前が悪い」「俺を悪者に仕立て上げて被害者面をするな」と返され、最終的には訴えた側が謝罪させられる結末に至ります。彼らにとって対話とは、双方が歩み寄るためのプロセスではなく、「どちらが支配権を握るか」を確定させる勝敗の儀式に過ぎません。健全な人間関係の土台である「心理的バウンダリー(境界線)」を平然と踏みにじるため、論理的な説得で行動を改めさせることは事実上不可能です。