奥之院の参拝ルートは、正式な表参道である「一の橋」から始まります。御廟までの距離は約2km、樹齢数百年を誇る老杉に囲まれた石畳の参道は、歩くだけで俗世から隔絶された感覚を呼び起こします。
参道沿いに林立する20万基以上の墓碑群には、日本の歴史を彩った著名な人物の名が刻まれています。驚くべきは、戦国時代に血で血を洗う争いを繰り広げた敵味方の武将たちが、わずか数メートルの距離で隣り合って眠っている点です。
織田信長、明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、伊達政宗、薩摩藩島津家――。現世での怨嗟や対立を超越し、大師の慈悲のもとで等しく極楽往生を願うという「高野山無差別平等」の思想が、この壮大な景観を作り上げました。特に明智光秀の供養塔は、何度修復しても亀裂が入るという言い伝えが残るなど、歴史ファンの探究心を刺激する逸話に事欠きません。
参道を進むと「中の橋」を渡り、やがて大師信仰の最核心部である「御廟橋(ごびょうばし)」へと至ります。この橋の先は、写真撮影・飲食・喫煙が一切禁止される絶対的な聖域となります。