なぜ、未来の命運を一身に背負った鈴羽のミッションは無残な結末を迎えてしまったのか。その構造を紐解くと、主人公である岡部倫太郎自身が善意で行った「ある行動」が引き金を引いていたという、逃れられない因果律が浮き彫りになります。
物語の発端は、8月9日に秋葉原を襲った激しい暴風雨の夜に遡ります。鈴羽はこの夜、タイムマシンを使って1975年へ旅立つ予定でした。しかし、行方不明の実の父親を一目見たいと願っていた彼女を思いやるあまり、岡部は過去を変える実験用メール「Dメール(過去へ送信できるメッセージ)」を使ってしまいます。「鈴羽を見張れ」という内容のメールを過去の自分に送ったことで、鈴羽の出発を引き止めることに成功したのです。
この引き止め工作によって、鈴羽は父親との絆を再確認することができ、岡部たちラボメンとの間にも温かい思い出が生まれました。しかし、この人情に基づいた選択が最悪の伏線となって作動します。秋葉原ラジオ会館の屋上に置かれていた彼女のタイムマシンは、暴風雨の激しい雨水に晒され、内部の基盤が致命的な水没故障を起こしていたのです。
本来であれば、暴風雨の前にタイムトラベルを行っていれば機体は何の異常もありませんでした。ダル(橋田至)の応急修理によって一見すると稼働したように見えたタイムマシンでしたが、その修復は不完全なものでした。鈴羽は機体の重大な欠陥に気づかないまま、不完全なタイムマシンに乗り込み、時空の彼方へと飛び立ってしまったのです。