ネット掲示板や週刊誌報道で長年囁かれ続けてきたのが「レコ大の出来レース説」や「事務所の力関係による枠争い」という言説です。しかし、関係者への徹底取材を進めると、そこには単なる不正や癒着という言葉では片付けられない、レコ大新人賞選考基準が抱える構造的限界が浮かび上がってきます。
最大の盲点は、多くのユーザーが誤解している「エントリー辞退」の存在です。現代の音楽シーンにおいて、すべてのアーティストが日本レコード大賞の受賞を望んでいるわけではありません。独自のクリエイティブ方針を持つインディーズレーベルや、テレビ露出を一切行わない覆面系アーティスト、あるいはグローバル市場を第一ターゲットに見据えるプロジェクトの中には、主催者側からのノミネート打診を「公式に辞退」しているケースが少なからず存在します。
テレビ局側としても、生放送のステージに出演して生パフォーマンスを披露してもらえなければ番組が成立しません。そのため、「授賞式会場(新国立劇場)に当日登壇し、生演奏を行うこと」が事実上の選考前提条件となります。結果として、ネットで圧倒的な数字を持ちながらもテレビ出演を望まない新人が除外され、テレビ出演に前向きな大手・準大手レーベル所属のアーティストがレコ大新人賞歴代受賞者として名を連ねることになります。これが外見上、「出来レース」や「特定の事務所優遇」のように映る構造を生み出しているのです。