乳児の育児に取り組む親の間では、「我が子の顔つきがどこか周囲と違うのではないか」「知的障害のサインではないか」と深く苦悩する声が少なくありません。しかし、乳児期の顔立ちの変化は非常に大きく、目の大きさや鼻の高さだけで判断することは不可能です。
小児科や小児神経科の領域において、乳児期の発達サインとして注視されるのは顔の造形ではなく、以下のような行動面・神経発達面のマイルストーンです。
- 生後2〜3か月:あやすと笑い返すか、目を合わせてじっと見つめるか(社会的微笑・注視)。
- 生後4〜6か月:動くおもちゃを目で追うか(追視)、首のすわりやクーイング・喃語の出方。
- 生後9〜12か月:指差しをした方向を見るか、名前を呼ぶと振り向くか、共同注視が成立するか。
精神疾患の国際的な診断基準であるDSM-5-TRや、世界保健機関(WHO)のICD-11における「知的能力障害」の診断基準を見ても、外見に関する項目は1行も存在しません。診断は以下の2つの軸で厳格に下されます。
- 知能検査(WISCや田中ビネーなど)において、標準化されたIQがおおむね70以下であること。
- 日常生活や社会生活に必要な「適応機能(概念的・社会的・実用的な領域)」に明らかな制約が存在すること。
発達期(おおむね18歳〜22歳未満)にこれらの基準を満たしているかどうかが全てであり、顔つきによるスクリーニングは医療現場において一切行われません。