1969年、小説『戦い済んで日が暮れて』で第61回直木三十五賞を受賞し、名実ともに日本文学界の頂点へと上り詰めた彼女。世の中に溢れる涙を誘うような湿っぽい闘病記とは、一線を画す表現スタイルを貫いてきた。病に伏せる自分を客観的に眺め、時には自虐的な笑いに変えてみせる。そのニヒリズム混じりの温かさこそが、彼女独自の文学的スタンスである。
彼女にとって、病気は特別に忌み嫌うべきものではなく、生きていれば当然やってくる「お客さん」のようなものなのかもしれない。淡々と受け入れつつ、決して自分の主導権を病魔に渡さない。その姿は、医療の数値ばかりに一喜一憂する現代人に、生きることの本来の意味を問いかけている。