なぜ、若返りを求めてクリニックの門を叩いた人々が、耐えがたい後悔に苛まれることになるのでしょうか。美容外科の医療事故相談窓口や大手美容掲示板に寄せられた数百件の相談事例を分析すると、後悔する人たちには驚くほど一致した3つの共通点が浮かび上がってきます。
第1の共通点は、ほうれい線治療の失敗や後悔の理由の筆頭に挙げられる「原因の誤認」です。ほうれい線は単なる皮膚のシワではなく、頭蓋骨の骨吸収による骨格の窪み、頬の脂肪体(メーラーファット)の下垂、表情筋の拘縮、真皮層のコラーゲン減少といった複数の加齢現象が複雑に絡み合って生じます。それにもかかわらず、「シワがあるから溝を埋めれば消えるはずだ」と思い込み、皮膚のたるみが主原因であるにもかかわらずヒアルロン酸を過剰に注入してしまうケースが多発しています。その結果、溝が消えるどころか口元が前方に盛り上がり、いわゆる「アバター顔」や「ヒアル顔」と呼ばれる異様な輪郭に変貌してしまうのです。
第2の共通点は、大手クリニックの安価な広告キャンペーンに誘引され、カウンセリング当日に勢いで契約してしまう心理的隙です。某美容皮膚科医は現場の実情を次のように証言します。「初回限定1本9,800円といった極端な集客広告で来院させ、カウンセラーが『あなたのたるみは重度だから、今日100万円の糸リフトを入れないと手遅れになる』と不安を煽って即日契約させる事例が依然として横行しています」。冷静な判断力を失ったまま、ダウンタイムやリスクの説明をろくに受けずに施術台へ上がった患者が、術後の顔の引き攣れや想定外の腫れにパニックを起こすパターンが後を絶ちません。
第3の共通点は、加齢に対する過剰な潔癖さと「ゼロサム思考」です。人間が自然に表情を作り、会話を交わす以上、小鼻から口元にかけて適度な陰影が生まれるのは生理学的に当然のことです。この自然なラインを完全に消し去ろうと執着するあまり、複数のクリニックを渡り歩いて製剤を足し続け、表情が完全に硬直してしまう「フィラー過剰症候群」に陥るリスクを多くの人が見落としています。