ノースサファリサッポロが「日本一危険な動物園」と称される最大の要因は、名物エリアである「デンジャラスゾーン」の特異な構造にあります。通常の動物園であれば二重三重の強化ガラスや強固な鉄格子で隔てられている猛毒ヘビ、ピラニア、ヤマアラシ、ワニといった危険生物の真上や至近距離を、わずかな足場を頼りに通過しなければなりません。
足元で巨大なワニが口を開けて待ち構える一本橋を渡る、頭上すれすれの位置にヤマアラシの鋭い針が並ぶといった設計は、来園者に「一歩踏み外せば無事では済まない」という直感的な恐怖を突きつけます。これが、ノースサファリサッポロが危険な理由として真っ先に挙げられる現場の構造です。
そして、このエリアへ足を踏み入れる前に突きつけられるのが、有名な「誓約書」です。用紙には「万が一、怪我や事故が発生しても一切の責任を園側に問わない」旨の文言が記されており、署名をためらう来園者も少なくありません。
しかし、法律実務の観点から見れば、消費者契約法第8条の規定により「事業者の損害賠償責任を完全に免除する特約」は法的に無効と判断されるのが通則です。園側の重過失や設備不良によって生じた人身被害について、紙一枚の署名で責任をゼロにすることは法的に不可能です。
では、なぜ園側は署名を義務付けるのか。取材班が安全管理の専門家とともに分析したところ、この誓約書の真の目的は法的な免責ではなく、「来園者の緊張感を極限まで引き上げる心理的バウンダリー(境界線)の設定」にあります。「自己責任」という重みのある契約行為を介することで、悪ふざけや不注意な接近を防ぎ、野生動物に対する最大限の敬意と注意力を引き出す実質的な安全ブレーキとして機能させているのです。