柴田がピン芸人として着実に信頼を回復していく一方で、世間が待ち望んでいたのが「アンタッチャブルのコンビ復活」でした。2004年のM-1グランプリを当時の歴代最高得点で制覇した天才漫才コンビでありながら、2人が並び立つ姿は10年近く失われていたからです。
その空白を破ったのが、2019年11月29日放送の『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)でした。MCの有田哲平が柴田に仕掛けたドッキリとして、別室から山崎弘也がサプライズ登場。事前の打ち合わせなしで即興漫才を披露した瞬間、スタジオと視聴者の興奮は最高潮に達し、Twitter(現X)のトレンド世界1位を獲得する歴史的事件となりました。
なぜコンビ復活までに10年もの歳月を要したのか。世間では一時期「深刻なコンビ不仲説」が囁かれましたが、真相は全く異なっていました。山崎弘也は柴田の休養中、ピン芸人として多忙を極めながらも、柴田に対して明確な条件を提示していたのです。それは「柴田が一人で番組に呼ばれ、一人で笑いを取り、芸能界で完全に地盤を固めるまでコンビは再開しない」という、厳しくも深い相方への愛でした。
もし山崎のネームバリューで柴田を引き戻せば、「相方のバーター(抱き合わせ)」として見られ、柴田自身の芸人としてのプライドと実力が正当に評価されない恐れがありました。山崎は柴田が自力でトップ前線に這い上がってくるのを静かに信じて待っていたのです。阿吽の呼吸で繰り広げられた復活漫才の熱量は、2人の絆が1ミリも損なわれていなかったことを完璧に証明しました。