数年前、日本のベーカリー業界を揺るがした高級食パンの乱立と急速な市場の収縮。タピオカブームの終焉にも似た厳しい現実のなかで、ブランドを展開する株式会社T.H.Sの手腕は際立っていた。
同社が展開したフードビジネス戦略の根底にあったのは、「ギフト需要への依存からの脱却」と「地域密着型の日常食化」だ。派手な奇をてらったマーケティングではなく、毎日の朝食やおやつとして買い続けられる適正価格と、徹底した品質管理に経営資源を集中させた。
全国の工房で変わらぬ焼き上がりを届けるため、天候や湿度に応じた生地の発酵時間を職人が秒単位で微調整する。その愚直なまでの誠実さが、移り気な消費者をリピーターへと変え、ブランドの強固な基盤を築き上げたのだ。