ジャガイモ(学名:Solanum tuberosum)の真の故郷は、南米大陸の背骨とも言える南米アンデス山脈の高冷地です。現在のジャガイモ原産国ペルー・ボリビアの両国にまたがる、標高約3,812メートルに位置するチチカカ湖周辺地域が、人類史上最初の栽培化拠点であることが近年の分子系統樹解析によって実証されています。
ペルーの首都リマに本部を置く国際ポテトセンター(CIP)の遺伝子研究報告によると、現在世界中で栽培されているほぼすべてのジャガイモは、アンデス高地に自生していたジャガイモ祖先野生種(Solanum brevicaule 複合群)に由来することが判明しています。紀元前6000年〜紀元前5000年頃(今から約7,000〜8,000年前)、この高地に入植した先住民族が、野生種に含まれる有毒なグリコアルカロイド(ソラニンやチャコニン)の含有量が少ない個体を選別し、何世代にもわたって品種改良を重ねたことが栽培化の始まりでした。
熱帯気候に属する南米でありながら、標高4,000メートル前後のアンデス高地は、夜間の気温が氷点下に達し、日中は強烈な紫外線と乾燥に晒される極限環境です。トウモロコシすら育たないこの厳しい気象条件において、地中に栄養を蓄えて霜や雹(ひょう)に耐える塊茎植物こそが、古代アンデス文明の生命線となりました。