アーサーが辿った変貌劇の根底にあるのは、魔神族による自国の蹂躙という圧倒的な喪失体験です。十戒の襲来によってキャメロットは壊滅状態に陥り、敬愛する臣民たちは魔神の食糧や奴隷として無惨に命を奪われました。当時、非力な一人の人間に過ぎなかったアーサーは、自らの無力さと理不尽な種族格差を骨の髄まで思い知らされることになります。
女神族や魔神族、妖精族、巨人族といった長命かつ強大な魔力を持つ種族の争いに巻き込まれ、常に最も脆弱な犠牲者となるのは人間でした。この凄惨な現実が、アーサーの精神を「人間だけの平和な世界を創らなければならない」という極端な選民思想へと駆り立てる決定打となったのです。
アニメ版で声優の國立幸氏が見事に演じ分けた「無垢で真っ直ぐな少年王」から「冷徹で威厳に満ちた冷酷な統治者」への声色のシフトは、彼の内面で起きた不可逆な変容を象徴しています。彼の闇落ちは邪悪への屈服ではなく、あまりに純粋すぎた愛国心と人間への執着が暴走した結果の悲劇と言えます。