湯船から広がる地平線を眺めていると、時間の感覚が徐々に麻痺してくる。風が通り抜けるたびに、立ち上る湯煙が複雑な模様を描いて空へと消えていく。SNSを中心に『一生に一度は浸かりたい奇跡の湯』として急速に拡散した背景には、過剰なデジタル社会に対する反動があるのは明白だ。
週末ともなれば、都心から遠方へと足を延ばす若者グループや、質の高い体験型観光を求めるインバウンド客で賑わう。彼らの目当ては映え写真の撮影だけではない。デジタルデトックスを目的とした長時間の滞在が増えている点が、これまでの観光ブームとは一線を画している。