もち米を語る上で外せないのが、地域ごとに受け継がれてきた手仕事の歴史だ。岩手県一関市などを舞台に、伝統的な餅文化と少女の成長を瑞々しく描いた名作フードドキュメンタリーの映画『もち』は、現代人が忘れかけた食の原風景を教えてくれる。
現在、NHKオンデマンドなどでも配信され再注目を浴びるこの作品では、臼と杵を使い、地域の人々が息を合わせて餅を搗き上げる一連のプロセスが丁寧に捉えられている。ただの調理作業ではない。自然への感謝と共同体の絆を育む儀式としての伝統食文化が、そこには確かに息づいているのだ。蒸しあがった米が放つ芳醇な湯気と、職人の手さばきが生む滑らかなテクスチャーは、効率最優先の現代社会において異彩を放っている。