メディアやSNSで頻繁に消費される「知る人ぞ知る」「路地裏の隠れ家」という惹句には、慎重な視線が必要です。商業的なプロモーションとして意図的に作られた「自称・隠れ家」と、結果として隠れた名店となっているご飯屋さんの穴場や隠れ家名店の間には、決定的な構造の違いが存在します。
前者の多くは、単に賃料の安い奥まった立地を選び、照明を極端に落とした演出で雰囲気作りを先行させているに過ぎません。これに対して、長年地元で営まれ続ける真の穴場は、過度な看板を出さずとも近隣住民の胃袋を掴んで離さない地元民絶品グルメとしての実態を備えています。市場の買い付けルートを半世紀近く維持している鮮魚店直営の食堂や、近隣の農家から規格外の良質な野菜を直接仕入れている小料理屋などがこれに該当します。
ネット上の誤解として多い「予約困難な店ほど旨い」という図式も、日常使いのご飯屋さんにおいては必ずしも当てはまりません。席数を極端に絞って希少価値を演出する手法が広まるなか、日々の暮らしに寄り添う真の名店は、適正な席数で回転を保ちながら、いつでも温かいご飯を用意して待っていてくれる包容力を持っています。