行政がこれほど厳しく注意喚起しているにもかかわらず、「地方の郷土料理店や特定の居酒屋で鹿刺しが普通に出てきた」という目撃情報は後を絶ちません。なぜ危険な生肉がテーブルに並ぶのか、その背景には法制度の構造的な隙間が存在します。
牛レバーや豚肉の生食提供については、食品衛生法に基づき罰則を伴う厳格な「販売禁止」が法制化されています。一方で、ジビエ肉に関してはガイドラインによる指導・自粛要請が中心となっており、違反した店舗が即座に刑事罰を受ける法規制の整備が牛・豚に比べて遅れてきた経緯があります。店側が「常連客からの強い要望」「昔からの慣習」を盾に、保健所の指導をすり抜けて裏メニュー的に提供しているのが真相です。
現場取材やSNS、知恵袋などの告発コミュニティを検証すると、鹿刺しを安易に摂取した当事者たちの生々しい声が浮かび上がってきます。
「旅先の居酒屋で『うちの鹿刺しは特別だから』と勧められて完食。約1ヶ月後に激しい倦怠感と吐き気に襲われ、救急搬送された結果は急性E型肝炎だった。肝臓の数値(ALT/AST)が数千まで跳ね上がり、隔離病棟で2ヶ月間点滴生活。医療費は30万円を超え、会社も休職することになった」(30代男性の手記より)
「ネットの掲示板で『一度冷凍すれば寄生虫は死ぬから鹿刺しは最高』という書き込みを信じて通販の冷凍鹿肉を生で食べた。翌朝から激しい腹痛と下痢が止まらず、診断はサルコシスティス食中毒。医師から『命があっただけマシ』と厳しく叱責された」(20代女性の投稿より)
食中毒のニュースとして表面化するのは氷山の一角に過ぎません。E型肝炎は潜伏期間が最長2ヶ月以上と長いため、患者自身が「数週間前に食べた鹿刺し」と結びつけられず、原因不明の急性肝炎として処理されている隠れ食中毒が多数潜在していると疫学の専門家は指摘しています。