変化動詞の中でもとりわけ認知言語学的な面白さを持つのが「go」と「come」です。中学校では「行く」「来る」という移動動詞として習いますが、状態変化を表す補語を伴う場合、そこには極めて人間的な感情のベクトルが反映されます。
言語学における「視点(Point of View)」の概念に基づくと、人間は「正常・健全・望ましい状態」を自分の足元(原点)と見なす傾向があります。そこから逸脱して離れていく動きを示すのが「go」であり、手元に引き寄せて実現させる動きを示すのが「come」です。これこそがcomeとgoを使う変化の真相です。
事実、goが形容詞を従えるフレーズを検証すると、驚くほど否定的な結末が並びます。
- The milk went bad.(牛乳が腐った)
- Everything went wrong.(すべてが狂ってしまった、台無しになった)
- He went blind after the accident.(彼は事故の後、失明してしまった)
- The company went bankrupt.(会社が倒産した)
これらはいずれも「正常な機能や秩序からの逸脱」を指しています。日本語の「いかれる」「パーになる」といった俗語表現が移動動詞のニュアンスを含むのと同様、英語圏でも「望ましくない方向へ行ってしまう」という感覚が動詞goに託されているのです。
一方、comeは話し手が歓迎する「調和・完成」の方向へ進みます。世界中で愛される慣用句「Dreams come true(夢が叶う)」がその筆頭です。バラバラだった事態が本来あるべき鞘に収まることを「Everything will come right in the end.(最後にはすべてうまくいく)」と言うように、ポジティブな着地点を描く際にはcomeが選ばれます。