物語のクライマックスにおいて、主人公・木山慎一郎(神木隆之介)が直面するのは、あまりにも不条理な「運命の二者択一」でした。自動車塗装工として静かに孤独を生きていた慎一郎はある日、死が迫っている人間の身体がガラスのように透けて見える特殊能力――ローマ神話の運命の女神に由来する「フォルトゥナの瞳」を手に入れます。
運命に介入して他人の命を救えば、その代償として心臓に激しい負荷がかかり、自らの身体が透け始めて寿命が削られていく。医師の黒川(北村有起哉)からその禁忌を警告されていた慎一郎でしたが、最愛の女性である桐生葵(有村架純)の手が透け始めたことで、平穏な日常は音を立てて崩れ去ります。
慎一郎が命がけで辿り着いた結末の舞台は、通勤電車とタンクローリーが激突炎上する大惨事の現場でした。葵が乗る予定だった電車には、保育園の遠足で乗り合わせた大勢の園児たちも揺られていました。慎一郎は自らの胸の激痛に耐えながら非常コックを引き、身を挺して列車を停止させます。大事故を未然に防ぎ、葵と多くの子どもたちの未来を救い出した代償として、慎一郎は線路脇で静かに息を引き取りました。
ここで多くの観客の胸を打った慎一郎の選択の真相は、単なる衝動的な愛の暴走ではありませんでした。彼は事前に自らの手が完全に透けている事実を確認しており、「自らの死期が既に目前に迫っていること」を悟っていたのです。残されたわずかな命を自分の延命に使うのではなく、愛する人と罪なき命の未来に捧げるという、極限状態における崇高な決断でした。