松笠揚げの醍醐味である「松ぼっくりのように逆立った鱗」は、どのようなメカニズムで生まれるのでしょうか。甘鯛の鱗は、他の白身魚に比べて薄くしなやかなコラーゲン層と硬質なリン酸カルシウム層で構成されています。ここに高温の油が触れると、鱗内部のわずかな水分が一気に水蒸気爆発を起こして膨張し、熱収縮した表皮から反り返るように立ち上がります。これが「甘鯛のウロコ揚げ」特有の快音を生み出す物理現象です。
一方で、家庭での調理において鱗が寝たまま硬化してしまう背景には、3つの明確な失敗要因が存在します。
第1の要因は「鱗表面および隙間の水分残存」です。水気が残ったまま油に入れると、油の熱が水分の蒸発に奪われて温度が急低下し、鱗を押し上げる爆発力が生まれません。第2は「油の温度不足」。160℃程度の低温からじっくり揚げてしまうと、鱗が反り返る前に油を吸い込んでしまい、ガムのように硬い口当たりになってしまいます。そして第3は「身と皮の縮率差による身の反り返り」です。皮が急激に縮むことで身が丸まり、均一に熱が通らなくなるトラブルです。