「何でもは知らないわよ知ってることだけ」の元ネタは、時系列上の発端である『傷物語』、そして刊行・放送順の第1作である『化物語』の「つばさキャット」などで幾度となく交わされた、阿良々木暦と羽川翼の象徴的な掛け合いです。
阿良々木暦が彼女の博識ぶりや鋭い洞察力に舌を巻き、「お前は何でも知ってるな」と感嘆するたび、羽川翼は人差し指を立てて涼やかな笑みを浮かべ、この決まり文句で否定します。さらに怪異の専門家である忍野メメの口癖「何でも知ってるね、お兄ちゃん」という他者への軽口と見事な対比構造を成しており、西尾維新特有の計算し尽くされた言葉遊びが光る名シーンです。
表面上は「私を買い被らないでほしい」という奥ゆかしい謙譲表現に聞こえます。しかし、物語が進むにつれて読者が突きつけられるのは、この言葉が持つ「冷徹なまでの自己限定」と「他者を踏み込ませない不可侵条約」としての意味合いでした。