彼の殺陣を一度でも目にした者は、その太刀筋の美しさと恐ろしいほどの鋭さに言葉を失う。竹割りの大太刀、複数の敵を瞬時に薙ぎ払う居合い、そして腰が深く落ちた実戦さながらの構え。昭和の映画界において「殺陣の神様」と称された理由は、一目見れば誰もが納得するはずだ。
撮影現場における近衛の逸話は、今なお語り草となっている。真剣に近い重さの特注木刀を軽々と操り、相手役の殺陣師やスタントマンがついていけないほどの速さで立ち回りを展開したという。それでいて寸止めの技術は完璧。相手に決して怪我をさせない繊細なコントロール能力を誇っていた。娯楽として最高の刀撃アクションを追求し続けた男の情熱が、画面全体から溢れ出している。