童磨という鬼の特異性は、その異常な過去と生い立ちに深く根ざしています。人間時代、童磨は「万世極楽教」の教祖の家に生まれました。生まれつき美しい虹色の瞳と白橡(しろつるばみ)の髪を持っていたことから、両親や信者たちから「神の声が聞こえる特別な子」として崇められ、信者たちの愚痴や苦悩を聞かされ続けて育ちます。
しかし、童磨の内面には一切の共感や感情が存在せず、救いを求める大人たちを「頭の可哀想な人たち」と冷ややかに見下していました。鬼となってからもその教団を維持し、苦しみから解放する「救済」と称して信者の女性たちを喰らい続けていたのです。
その教団に逃げ込んできたのが、伊之助の母親である嘴平琴葉(ことのは)でした。夫や姑から激しい家庭内暴力を受けていた琴葉の歌声と純朴さを、童磨は珍しく気に入り、「寿命が尽きるまで喰わずに手元に置く」つもりで匿っていました。しかし、童磨が信者を喰らっている現場を目撃した琴葉は狂乱して脱走。追いつめられた琴葉は赤子の伊之助を崖下の川へ落として命を託し、自身は童磨に骨まで喰い尽くされる悲劇に見舞われました。この因縁が、巡り巡って童磨自身の首を落とす刃となったのです。