横浜マラソン最大の代名詞といえば、海上に架かる首都高速道路湾岸線を走る約10キロメートルの特設区間だ。通常は自動車が時速数拾キロで飛び交うコンクリートの回廊が、この日ばかりはランナーだけの解放空間へと姿を変える。一見平坦に見える高速道路だが、実際には緻密な勾配が連続する。潮風の強さも時間帯によって目まぐるしく変化するため、ペーシングの精度が後半の失速を防ぐ鍵を握る。
後半30キロ地点を過ぎて高速道路を降りた後に立ちはだかるのが、通称「ハンマーヘッドの壁」と呼ばれるポートエリアの急坂だ。足に疲労が蓄積した局面での高低差は脚力を削り取るが、広大な横浜港と青空が織りなすパノラマビューがランナーの折れかけた心を強力に押し返す。潮の香りを胸いっぱいに吸い込みながら一歩一歩踏みしめる感覚は、他都市のレースでは味わえない醍醐味と言っていい。