ソーシャルメディアやグルメコミュニティの投稿を検証すると、「カフェでドライカレーを頼んだら挽肉が乗ったご飯が出てきた」「キーマカレーを注文したのにスープカレーのようにサラサラで驚いた」といった声が定期的に話題にのぼります。消費者の中で、両者の定義が依然として曖昧なまま流通している証拠と言えます。
都内・神田神保町で長年スパイスカレー店を営む店主は、厨房の舞台裏を次のように明かします。
「うちでは『ドライキーマ』という品名で出していますが、これはキーマカレーの手法で水分を極限まで飛ばし、フライドオニオンや卵黄を乗せたものです。インドの家庭的なキーマはもっと肉汁やトマトの水分を含んでおり、現地の方が日本のカフェのキーマを見たら『これは何という料理だ?』と疑問に思うかもしれません。日本の外食産業は、独自の進化を遂げた洋食ドライカレーのビジュアルを、本場のキーマカレーのスパイス感と巧みに融合させてきた歴史があります」
家庭料理の現場に目を向けると、市販のルーを使った簡単キーマカレー人気レシピがクックパッドやSNSで高い支持を集めています。みじん切りにした野菜とひき肉を炒め、市販のカレールーを細かく刻んで水気を少なく仕上げる調理法ですが、これは文化的には「家庭向けに簡略化された元祖ドライカレーの技法」を「キーマ」というモダンな響きで再定義したものと言えます。