看護現場では、4原則同士が対立することで看護倫理のジレンマが発生します。代表的な臨床事例を見てみましょう。
事例1:転倒リスクと行動制限のジレンマ
認知症の高齢患者が「歩いてトイレに行きたい」と訴えるものの、下肢筋力低下で転倒・骨折の危険が極めて高い場面です。「本人の意思を尊重したい(自律尊重)」思いと、「ケガをさせない安全管理(善行・無危害)」が真っ向から対立します。安易な拘束は尊厳を損なうため、見守り体制の強化や離床センサーの活用、環境調整による解決が模索されます。
事例2:本人と家族の治療選択における乖離
終末期がん患者本人は「苦痛なく自然に最期を迎えたい」と望んでいるのに対し、家族が「諦めずに積極的な延命治療を続けてほしい」と懇願するケースです。医療チームは家族の悲嘆に寄り添いつつも、患者本人の尊厳と事前指示をどのように優先すべきか、深い葛藤に直面します。