暖簾をくぐると漂う、芳醇な鰹節と醤油の香り。歴史ある風情漂う空間で客がすすっているのは、紛れもなくラーメンの黄色い縮れ麺です。「蕎麦屋が作るラーメン」という一見風変わりな取り合わせは、いかにして誕生したのでしょうか。元祖鳥中華の発祥を紐解くと、昭和の後期、厨房の奥で行われていた職人たちの日常へと行き当たります。
当時の店主や職人たちが、日々の重労働を終えたあとの「まかない」として、自分たちが食べるために蕎麦用の和風つゆに中華麺を入れ、鶏肉をトッピングしてすすっていたのがすべての始まりでした。近隣の温泉街で働く常連客や芸妓衆がその香りに気づき、「裏メニューとして自分たちにも食べさせてほしい」と懇願。口コミでその美味さが広がり、正式なメニューへと昇格したという歴史があります。
その後、全国ネットの人気テレビ番組『秘密のケンミンSHOW』をはじめとする数多くのメディアで紹介され、山形ご当地ラーメンの代表格として爆発的な脚光を浴びることになりました。一般的なラーメンとの決定的な違いは、動物系の白湯や豚骨ガラでスープを取るのではなく、純和風の蕎麦出汁(昆布やカツオ節から引いた本返し)をベースにしている点にあります。そこに鶏肉の旨味と上質な天かすの油分、そして仕上げに振りかけられる強めの黒胡椒が加わることで、あっさりとした和の風味とパンチのあるコクが共存する奇跡的な一杯が完成しました。