『少年と犬』なぜ泣ける?多聞の旅の結末と実話モデル・映画化の全貌

『少年と犬』なぜ泣ける?多聞の旅の結末と実話モデル・映画化の全貌

『少年と犬』なぜ泣ける?多聞の旅の結末と実話モデル・映画化の全貌の詳細について、最新情報を取りまとめてご紹介します。

物語の起点となるのは、2011年3月の東日本大震災です。岩手県釜石市で飼い主の家族と離れ離れになったシェパード系の雑種犬「多聞」は、守り神のような名を与えられ、ひたすら南へと歩き始めます。

本作は全6編の連作短編形式で構成され、多聞が旅の途上で出会う様々な事情を抱えた人間たちとのドラマがオムニバス形式で綴られます。多聞とすれ違う登場人物たちの相関と旅路は以下の通りです。

  • 第1章「男と犬」(岩手〜宮城):認知症の母と家族を支えるため、犯罪組織の運転手へと身を落とした中垣和正。行き倒れていた多聞を拾い、その知性に救われますが、追手を逃れる逃避行の果てに非業の最期を遂げます。
  • 第2章「泥棒と犬」(新潟):外国人窃盗団の仲間割れから逃げるミゲル。多聞と出会い、孤独な魂を通わせながら国境を越えた逃亡を企てます。
  • 第3章「夫婦と犬」(富山):壊れかけた夫婦関係に苦しむ美津江と沼口。多聞の存在が一時の安らぎをもたらすものの、人間のエゴと愛憎が破滅を呼び寄せます。
  • 第4章「娼婦と犬」(滋賀):体を売りながら刹那的に生きる美羽。多聞を匿う中で生きる希望を見出そうとしますが、暴力の影が忍び寄ります。
  • 第5章「老人と犬」(島根):末期がんに冒され、山中で孤独な死を選ぼうとする元猟師の内藤弥平。多聞と出会ったことで、命の灯火が消える瞬間まで生き抜く覚悟を決めます。
  • 第6章「少年と犬」(熊本):震災で心に深い傷を負い、言葉を失ってしまった少年・光。多聞が5年間・数千キロの旅路で目指し続けた目的地であり、最愛の親友でした。

多聞は決して人間に媚びず、誰に対しても澄んだ瞳を向けます。自暴自棄になった人間たちの心の隙間を埋め、生きる力を与えながらも、ある方角――「南」をじっと見つめ、再び歩き出す姿が切なく胸に迫ります。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。