利用者の健康状態が急変した際、あるいは継続的な処置が必要となった際に、施設がどこまで対応できるかは生命に直結します。ここで注目すべきは、法律で定められた医師常駐基準と看護体制の圧倒的な格差です。
介護老人保健施設の医師常駐基準は、原則として「入所者100人に対して常勤医師1名」です。平日の日中は医師が勤務していますが、夜間や休日は医師が不在となり、宿直看護師からの「オンコール連絡」で指示を仰ぐ体制をとる施設が大半を占めます。そのため、夜間にたん吸引が頻繁に必要な状態や、容態の急激な悪化が生じた場合、施設内での処置には限界があり、提携病院への救急搬送や一時退所を余儀なくされる局面が珍しくありません。
これに対し、介護医療院は旧療養病床の流れを汲む「Ⅰ型」と、老健以上の医療水準を持つ「Ⅱ型」に分かれます。特に重篤な患者を受け入れるⅠ型では、入所者48人に対して医師1名が配置され、看護職員も入所者6人に対して1名(老健は入所者3人に対して看護・介護職員計1名、看護師比率は2〜3割)と、病院の病棟に極めて近い強固な医療体制が維持されています。
胃ろうや腸ろうなどの経管栄養、頻回なたん吸引、気管切開部の処置、中心静脈栄養(IVH)、さらには人工呼吸器の管理や持続点滴といった高度な医療処置について、老健では「受け入れ不可」または「状態が落ち着くまでの限定的対応」とされるケースが目立ちます。一方で介護医療院は、これらの処置を日常的な生活の一部として継続できる設備と人員を確保しています。看取り(ターミナルケア)においても、最期の瞬間まで医師と看護師が密密に寄り添い、疼痛緩和を含めた医療処置を継続できる点が、家族にとって計り知れない安心感につながっています。