日本の雨文化を語る上で欠かせないのが、竹と和紙、植物油で作られる伝統的な和傘の存在だ。細身で優美な骨組みに細やかな糸飾りが施された「蛇の目傘」は、中央に白い輪の模様を描き、古くから粋人や女性たちの心を捉えてきた。歌舞伎の舞台『助六由縁江戸桜』で主人公が携える姿にも象徴されるように、それは単なる雨具ではなく、持つ者の立ち振る舞いや気品を際立たせる小道具でもあった。
対照的に、太い竹骨に厚手の和紙を張った無骨で堅牢な「番傘」は、庶民の日常を支え続けた実用美の結晶といえる。商家が屋号や番号を入れて貸し出したことからその名がついたとされるが、油の香りと共に雨粒を弾く鈍い音は、どこか懐かしく温かい。現代の和柄デザインは、こうした古典的な傘が持っていた骨組みの直線美や陰影の妙を色濃く受け継ぎ、現代のファブリックへと再解釈されている。