六角精児バンドが熱狂を呼ぶ理由|名優が奏でる泥臭きフォークの真価

六角精児バンドが熱狂を呼ぶ理由|名優が奏でる泥臭きフォークの真価

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バンドの認知度を一気に全国区へと押し上げた契機といえば、NHK BSの人気紀行番組『六角精児の呑み鉄本線日本旅』での楽曲起用です。なかでも同番組の象徴的な挿入歌として愛されているのが、六角自身が作詞・作曲を手掛けた名曲「ディーゼル」です。地方ローカル線の気動車に揺られながら酒を酌み交わす旅愁、変わりゆく景色と変わらない人間の営みをスケッチしたこの曲は、旅好き・鉄道ファンのみならず、日常に疲れを感じた多くのリスナーの涙腺を刺激しました。

これまでリリースされた六角精児バンドのアルバム作品を紐解くと、彼らの音楽的バックボーンの深さがより鮮明になります。2014年に世に放たれた1stアルバム『石ころ人生』は、自らのギャンブル依存や借金、度重なる離婚といった赤裸々な過去を自虐とユーモアを交えて昇華した名盤です。表題曲「石ころ人生」や「お父さんが嘘をついた」など、世間のレールから外れてしまった人間への優しい眼差しが全編に貫かれています。

続く2019年の2ndアルバム『愛の亡霊』では、フォーク・ブルースとしての純度をさらに深め、早川義夫のカバーやオリジナル曲を通じて、人間の心の深淵にある愛憎や孤独を生々しく描き出しました。さらに六角精児ソロ名義でリリースされたカバーアルバム『人は人を救えない』(2022年、P-VINE)を経て、バンドの表現力は円熟味を増しています。綺麗事の歌詞を一切排除し、「どうしようもない自分」をそのまま肯定する楽曲群こそ、彼らが長年支持され続ける核となっています。

加藤 愛美
著者

加藤 愛美

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。