かつて日本中を熱狂させた北島康介の二大会連続二冠や、超人的な記録を打ち立てたマイケル・フェルプスの偉業の裏には、常に名参謀たちの緻密な戦略が存在していた。現代の競泳界は、その知見をさらにテクノロジーで拡張させた時代に突入している。水中カメラによる3次元動作解析や乳酸値の即時測定が当たり前になり、感覚だけに頼るスポーツ指導・コーチングは急速に淘汰されつつある。
公益財団法人日本水泳連盟が掲げる最新の指導ガイドラインでも、科学的根拠に基づいたアプローチの定着が強く促されている。身体を酷使して疲弊させるだけの練習は、もはや過去の遺物だ。ミリ単位で手のひらの軌道を整え、流体力学的に最も効率の良い推進力を獲得する。頭脳戦としての競泳が、いまプールサイドで静かに繰り広げられている。