とろサーモンの経歴は、日本のお笑い史の中でも類を見ないほどのジェットコースターです。2002年のコンビ結成後、「スカし漫才」という新境地を開拓して賞レースの常連となるも、あと一歩のところで煮え湯を飲まされ続けました。
転機が訪れたのは、ラストイヤーとして背水の陣で挑んだ2017年の「M-1グランプリ」でした。4,091組の頂点に立ち、結成15年目の第13代王者に輝いた瞬間、38歳だった久保田と村田は抱き合って涙を流しました。遅咲きの苦労人が報われたサクセスストーリーとして、全国のファンがその栄冠を祝福したのです。
しかし、栄光の直後である2018年末、泥酔配信による審査員批判騒動が勃発。瞬く間に大炎上へと発展し、テレビ業界の表舞台から一時的に姿を消すことになります。多くの芸人であればそのままフェードアウトしかねない致命的な打撃でしたが、久保田の凄みは「このどん底からの立ち回り」にありました。
彼は謝罪を経て反省を示しつつも、自らの毒気を完全に抜いて「丸くなる」道を選びませんでした。深夜番組やABEMAなどの配信メディア、さらには自身のYouTubeチャンネルで炎上すらもエッジの効いた自虐ネタへと昇華。テレビ朝日の深夜バラエティ『耳の穴かっぽじって聞け!』など、本音を剥き出しにする番組で圧倒的な存在感を発揮し、2020年代半ばには「毒舌だが言っていることは的確な批評家」としての揺るぎないポジションを奪還したのです。