では、なぜ人は他人の不自然な箸使いに対して、これほどまでに強い違和感や不快感を抱くのだろうか。日本伝統食文化の研究者であり行動心理学に詳しい専門家は、「箸は単なる道具ではなく、指先の繊細な運動能力と日常の几帳面さを象徴する器官の延長だからだ」と分析する。
正しい箸の持ち方は、上の箸を親指・人差し指・中指の3本で支え、下の箸を薬指の爪の脇と親指の付け根で固定する構造になっている。これによって無駄な力を使わず、魚の骨を外したり小さな豆をつまんだりできる。しかし、「握り箸」や「交差箸」になると、腕や手首全体に無駄な力が入り、箸先が乱雑に動く。見ている側に『力任せで粗野な動作』という視覚的ストレスを与えるのが、違和感の本質なのだ。