坂元裕二の手がけるシナリオには、一見何気ない日常の会話の中に鋭利な伏線が張り巡らされている。例えば、作中で繰り返し登場する「かき氷」や「湖の情景」、そして登場人物たちが口にする「普通の暮らし」というフレーズ。これらは単なる情景描写ではなく、失われた過去への絶望と、二度と戻らない日常への憧憬を暗黙のうちに象徴する緻密な仕掛けとなっている。
当時の制作現場から明かされた未公開裏話によれば、主演陣と坂元裕二の間では、台本に書かれたセリフの一言一句のニュアンスに至るまで連日過酷なディスカッションが重ねられていたという。とりわけ劇中の長回しによる会話劇のシーンでは、意図的にテンポを崩す間(ま)や即興に近い吐息の音が採用され、視聴者の感情を極限まで揺さぶるライブ感を創出。セリフの裏に隠された「言葉にならない感情」を画面に刻みつける手法は、まさに圧倒的な脚本術の賜物であった。