新幹線とホテルのセットプランが個別予約と比べて劇的に安くなる背景には、鉄道会社と旅行会社の間で長年運用されている「包括旅行割引運賃(IT運賃:Inclusive Tour Fare)」の存在があります。JR各社は通常、正規の乗車券・特急券の価格を厳格に管理していますが、旅行会社が宿泊施設とセットにして「募集型企画旅行」または「手配旅行(ダイナミックパッケージ)」として販売する場合に限り、大幅に割り引いた特別な専用座席枠を提供しています。
この仕組みにおいて、旅行会社は新幹線単体の割引額を対外的に公表してはいけない規約になっています。運賃の内訳を隠して宿泊代と一体化させることで、JRの正規運賃体系のブランドを崩すことなく、閑散期や特定時間帯の空席を効率的に埋めることができる構造です。
さらにホテル側にとっても、旅行会社向けに安価な卸値レート(FITレート)で客室を提供することで、自社サイトだけでは埋めきれない客室稼働率を安定して底上げできるメリットがあります。つまり、新幹線ホテルパックの驚異的なコストパフォーマンスは、「鉄道会社の空席在庫処分」と「ホテルの稼働率向上」という双方の利害が一致した結果生み出される合理的ディスカウントなのです。
例えば「東京〜新大阪」を往復する場合、正規ののぞみ指定席往復運賃は約29,840円かかります。一般的なビジネスホテルに1泊(約9,000円)すると合計約38,840円になりますが、主要旅行社のセットプランを活用すると、時期によっては宿泊費込みで27,000円〜31,000円前後で予約可能です。実質的に「新幹線の往復代金以下でホテルが無料で付いてくる」ような逆転現象が起こるのは、こうした業界構造の裏付けがあるためです。