本作の受容史を語る上で欠かせないのが、インターネット上の匿名掲示板やSNSで巻き起こった熱狂的かつ歪なコミュニティの反応です。当時の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)や現在のあにまん掲示板等において、『パジャマな彼女。』は連載終了後も度々スレッドが立ち、語り草となってきました。
読者の証言や当時の書き込みを精査すると、反響は大きく二分されていました。
- 作画と雰囲気への陶酔:「濱田先生の描く女の子の太ももや指先のラインが色っぽすぎる」「夜の学校の静けさや、空気の冷たさが伝わってくる作画力はジャンプ随一だった」という熱烈な美術的評価。
- ストーリー進行への困惑と恐怖:「ラブコメを読みに来たら精神的ホラーを見せられた気分」「ヒロインがいつ死ぬか分からないカウントダウンがきつくて脱落した」という、掲載誌の読者層とのミスマッチによる拒絶反応。
そしてネット上で今なお語られるのが、作者の愛称・スラングとして定着した「パコさん」という符牒です。これは『パジャマな彼女。』の略称「パジャカノ」がネットスラングとして変形・定着したものであり、ジャンプでの打ち切りという挫折を味わった濱田浩輔氏が、後作『はねバド!』において豹変した際、「あのパコさんがここまで尖った怪物漫画を描くようになったのか」と畏怖を込めて呼ばれる契機となりました。
当時の特番インタビューや関連書籍の証言、関係者の回想によれば、濱田氏はジャンプ連載時、読者アンケートの動向と自らの描きたいドラマ性のギャップに激しく苦悩していたとされます。その葛藤が画面から滲み出る「歪み」となり、読者に「怖い」という強烈な読書体験として焼き付いたことは間違いありません。