この希代の事件が白日の下に晒されたのは2009年秋のことでした。「婚活サイトで知り合った男性が次々と不審死を遂げている」という情報から警察当局が内偵を進め、同年9月に木嶋死刑囚が詐欺容疑で逮捕されたことを皮切りに、首都圏連続不審死事件(婚活連続殺人事件)の全貌が明るみに出ました。
立件された3件の殺人事件の被害者と被害実態は以下の通りです。
- 寺田隆夫さん(当時53歳 / 2009年1月死亡):東京都大田区の自宅で練炭による一酸化炭素中毒死。自殺と見せかけられ、口座から約1,700万円が木嶋死刑囚に詐取された。
- 安藤建三さん(当時80歳 / 2009年5月死亡):千葉県野田市の自宅で火災により死亡。寝たきりの父親を介護する生活の中で木嶋死刑囚と出会い、直後に不審死。多額の現金が奪われた。
- 大内孝芳さん(当時41歳 / 2009年8月死亡):埼玉県富士見市の月極駐車場に停められたレンタカー車内で練炭自殺を偽装されて殺害。結婚前夜のデートと信じ込まされていた。
この他にも、結婚や学費名目で金を騙し取られた男性は多数に上り、被害総額は確認されただけでも1億円以上に達します。公判では直接証拠(犯行時の目撃証言や指紋、防犯カメラの決定的映像)が存在しない中、状況証拠の積み重ねが焦点となりました。
2017年4月、最高裁判所上告棄却の決定において、裁判所は以下の点を重視して死刑確定の理由を明確に示しました。
- 被害者全員の体内から木嶋死刑囚が処方されていた睡眠導入剤と同一成分が検出されたこと。
- 犯行直前に被害者宅や現場周辺で木嶋死刑囚の所持品や行動履歴が確認されたこと。
- 事前に計画的に練炭、七輪、コンロなどを購入していた明確な購入履歴。
- 男性側の自殺動機が皆無であり、死亡直後に木嶋死刑囚の口座へ多額の送金が行われている点。
最高裁は「被告の弁解は到底信用できず、冷酷かつ計画的な連続殺人であり、金銭利得のために生命を奪った結果は極めて重大。遺族の処罰感情も峻烈であり、死刑の適用は免れない」と断じ、一審・二審の死刑判決を支持して司法判断を結審させました。