「歯茎に膿が溜まっているのに、ズキズキとした痛みがまったくない」というケースは珍しくありません。しかし、痛みがないことと病状の軽さは完全に無関係です。
歯茎の膿が痛くない理由は、主に2つのパターンが存在します。1つ目は、虫歯が神経まで達して歯髄が完全に壊死してしまい、痛みを感じるセンサー自体が消失しているパターン。2つ目は、前述のフィステルが形成されたことで、溜まっていた膿が微量ずつ外部へ排出され、歯槽骨内部の内圧が下がっているパターンです。風船が破れて圧力が抜けた状態と同じであるため激痛は治まりますが、内部の骨融解は水面下で確実に進行しています。
多くの人が抱く「歯茎の膿は自然治癒するのか」という疑問に対する医学的な回答は「100%自然治癒しない」です。放置し続けた場合、以下のような深刻な疾患が進行し、最終的には抜歯を余儀なくされます。
歯茎の膿を放置するリスクと代表的な3つの原因疾患を整理します。
- 根尖性歯周炎の症状と治療法:過去に虫歯治療で神経を抜いた歯や、強い打撃を受けた歯の根の先端に細菌が巣食い、骨を溶かしながら膿の袋を作る病態です。治療には古い薬を削り取って根管内を無菌化する精密な再根管治療が必要です。
- 歯肉膿瘍の原因と特徴:重度の歯周病が進行し、深い歯周ポケットの出口が塞がることで、ポケット内部で増殖した歯周病菌が急激な炎症と膿の塊を形成する状態です。歯槽骨の破壊が急速に進む特徴があります。
- 歯根嚢胞の治療と手術費用:根尖性歯周炎を長期間放置した結果、根の先端に上皮性の袋(嚢胞)が形成され、その中に液体が溜まる病気です。病変が大きくなると隣の健康な歯の根を吸収したり、神経を圧迫したりするため、歯根端切除術や嚢胞摘出術などの外科手術(保険適用で約1万〜3万円前後、自己負担3割の場合)が必要となります。